今回は書籍「日本人の勝算(デービッド・アトキンソン)」の書評です。
本の概説
この本をひとことで言うと
「高齢化、人口減少の問題をかかえてる日本には、生産性向上施策がマスト」
この本は、118もの海外エコノミストの論文を読み上げ、今後日本で深刻化する高齢化や人口減少にどのように対処すべきか著者自身の考えをまとめた一冊です。
著者は日本に30年住んでおり、とても日本が好きだそうです。だからこそ、このまま日本が衰退してほしくない。その想いが強いように感じました。
日本経済においてどのような問題があり、海外事例や論文からどのように解決すべきかを書かれています。本ブログでは簡単に紹介するのと、私の所感を書いていきます。
日本がかかえる問題
高齢化と人口減少です。
そして、デフレリスクです。
高齢化や人口減少により、今よりも需要が減っていくと言われています。当然、需要が減ればデフレリスクは高まります。
需要が減れば企業同士の生き残り競争により、労働者への分配率が低下していくと言われています。
利益を削って生き残り競争をしている企業が、次に削るのは人件費、つまり労働者の賃金です。
解決策
ひとことで言うと「最低賃金の引き上げ」です。
簡単に表現すると以下の論理です。
最低賃金の引き上げ → 生産性の向上 → GDPの成長
生産性向上を目指す訳
日本は人口減少していくので、人口増によるGDP増加は見込めません。むしろ、何も対策しないと人口減少によりGDPは減少していくでしょう。日本のGDPは世界3位です。しかし、一人当たりGDP(生産性)は世界29位です。
何を意味するかというと、今の日本のGDPは人口の多さに起因しているという事です。人口減少をすればGDPも減っていきます。
逆に考えるとまだまだ日本には伸びしろがあるという事を意味します。
人口増加が見込めない今、GDP増加(もしくは維持)させる為には、生産性の向上しかありません。
生産性向上の為には、最低賃金の引き上げをすべきといいます。
最低賃金の引き上げについて
様々な論文から、最低賃金を引き上げると、生産性が向上するといいます。
なぜかと言うと、最低賃金を引き上げると、企業は人件費を削減する事が難しくなります。そうなると企業は利益を削るか、生産性を向上させるしかありません。
しかし、利益を削るのは限界があります。そうなると企業は生産性向上の努力をするというロジックになります。
所感
本の冒頭からかなり厳しい事が書かれています。著者による、「危機感を持ち、行動してほしい」という想いがよく伝わってきます。解決策である「最低賃金の引き上げ」はかなりの痛みを伴うものだと思います。
仮に実現されれば、淘汰される企業も多く出ると思います。
本書で書かれている内容として、2020年に経済成長率を維持する為には、最低賃金(時間当たり)を1291円に引き上げる必要があるといいます。経済成長率を見込むとそれ以上にあげる必要があります。
ただでさえ今でも人材の競争が激しく、賃金は上昇傾向なのに、これだけ賃金をあげるとなるとコンビニやスーパーなどはかなり厳しい状況に追い込まれると思います。
銀行で過去に起こった企業同士の統合が起こるだろうと言います。少なからず淘汰される企業が出てくるはずです。
そこまで本気になって取り組まないと未来はないというメッセージだと感じました。
興味のある方は是非読んでみてください。
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