今回は書籍「CreativeSelection Apple創造を生む力(ケン・コシエダ)」の書評です。
本の概説
この本をひとことで言うと
「地道な選択の繰り返しがクリエイティブな製品を生み出す」
著者は、AppleのSafari、iPhone、iPad、Apple Watchの開発に携わったエンジニアです。著者視点でのSafari、iPhone、iPadの製品開発現場でのアイデアのひらめきから、市場に出るまでの製品開発プロセスで体験した内容をかなり細かい部分まで書かれています。
この本を読むと、どのようにSafariやiPhoneやiPad(特にソフトウェアキーボード部分)が開発されたか、そしてAppleの考え方や大事にしている事がわかります。
本書では、製品開発で必要な要素を7つにまとめています。
インスピレーション、コラボレーション、テクニック、勤勉さ、決断力、テイスト、共感力
これらの要素が必要になった場面は、本書のエピソードの各所にちりばめられています。
本ブログからは2点、エッセンスをお伝えします。
アイデアを受け入れてもらうには
洗練されていないアイデアも、説明するための像がなければ建設的に議論するのは難しい
※書籍より引用
アイデアはヒラメキだけではダメだといいます。具体的に目に見える形(アップルではデモンストレーションという形式で実践)が必要です。
チームメンバーの前でデモを見せれば、そのアイデアを受け入れてもらいやすくなります。
アップルではデモの文化が根付いています。だから斬新なアイデアが生まれるのだと思います。
良いデザインとは
「デザインとは、どう機能するかだ」
これはスティーブ・ジョブズの有名な言葉です。
この意味は、重要なのは、そのデザインからどのような使い方をすれば良いか、直感的にわかる事だといいます。
著者のアイデアで、iPhoneのキーボード(英語版)のデザインは、1つのキーに複数のキーを割り当てるという方法で開発が進められてきました。
しかし、この配列だとユーザーに考えさせてしまうのだと気づいたのです。また、予測入力(入力したキーから単語を予測する機能)がうまく機能しない問題もあったといいます。
であれば、ひと目でわかる昔ながらのキーの配列(QWERTYキーボードという)の方が良いと判断されました。最初の案に戻る勇気は相当なものです。この判断が出来たのは、スティーブ・ジョブズの「デザインとは、どう機能するかだ」の言葉からもわかる通り、美しくあるかが重要視されていた結果だと思います。
所感
まず思ったのは著者の経験から、Appleの詳細かつ具体的な開発秘話が知る事ができる貴重な本だという事です。
私もiPhoneやiPadなど当たり前のように使用していますが、製品の完成に至るまでは相当な試行錯誤があったのがよくわかりました。(iPhoneのアイコンサイズはミリ単位で調整していたそうです)
一瞬のひらめきやアイデアを最短日数でデモとして見せる。そして採用された後は何度も何度も試行錯誤し、製品レベルまで洗練していくプロセスは暗闇のトンネルを進んでいるように思えます。
しかし、暗闇のトンネルから出口にみえる「デザインとは、どう機能するか」に代表される明確なコンセプトという微かな光があるので進んでいけるのだと思います。
意外とこの本って話題になっていませんが、個人的には良書だと思います。
SafariやiPhoneの開発秘話が知りたい方や製品開発に携わっている方におススメです。。
興味のある方は読んでみてください。
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